後継者不足問題の最新情報と解決策をご紹介

事業承継

コロナ禍における後継者不足の現状

後継者不足により廃業に追い込まれる企業も少なくはなく、企業において「後継者不足」は大きな問題となっています。

今回は2021年現在における最新の後継者不足の現状と後継者不足の原因、その有効な解決策に至るまで詳しく説明していきます。

コロナ禍で後継者不在率61.5%と改善傾向

https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p211104.pdf

2021年の株式会社帝国バンクの調査によると全国で全業種約26万6000社において後継者が「いない」「未定」と答えた企業が16万社に上りました。

その結果、全国の後継者不在率は61.5%となり前年度の不在率65.1%から3.6pt改善されました。これまで2018年から4年連続で不在率が低下しており2011年以降で過去最低となっています。

この結果の要因としてはコロナ禍での事業環境の急激な変化によって高齢代表の企業を中心に後継者決定に向けての意欲が高まってきたことが考えられます。

また地域金融機関などを中心に行われていきた後継者不足を解決する活動が徐々に成果を出し始めていたり、第三者へのM&Aや事業承継など経営者の選択肢が整ってきたこともこのような改善に貢献していると考えられます。

業界別での後継者不在率

https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p211104.pdf

業種別では建設、製造、サービスなどを含む全業種で後継者不足の改善が見られ、全業種で不在率が70%を下回りました。そして全業種において過去最も低い結果となりました。

地域別での後継者不在率

全都道府県内で最も不在率が低かったのは35.8%で三重県でした。三重県が全国で最も低い不在率となるのは2021年が初めてであり、同県は2021年において不在率4割を下回った唯一の県となりました。

三重県では2019年度の調査で不在率69.3%を記録してから2年間で急激な変化がみられ33.5pt低下しました。

同県での不在率低下の考えられる主な理由としては「地域金融機関の手厚い支援がある点や、経営や商圏が比較的安定的である企業が多く、親族が経営を引き継ぎやすい環境が整っている点」などがあります。

一方で鳥取県は全国平均61.5%に比べても遥に高い74.9%を記録しており、全国で不在率のトップになっています。ただ同県も前年度の不在率77.9%と比べると低下しており、全国的には総じて後継者不在率は低下傾向にあると考えられます。

最も不在率が低い三重県と最も高い鳥取県を比べると両者の差は39.1ptもあり後継者問題の改善状況においては地域差があることがわかります。

なぜ後継者不足が生じるのか

少子化

後継者不足を引き起こしている一つの要因として日本が全国的に少子化傾向にあることが挙げられます。少子化は社会の様々な所で影響を及ぼしていますが、後継者問題においても多大な影響を及ぼしています。

かつての企業では後継ぎはほとんどの場合で子供が選ばれていましたが、少子化によって子供の数が減っていること、会社を引き継ぎたくないという子供が増加したことで後継者問題はさらに深刻になっています。

このような現状を受け、経営者の事業承継の選択肢として親族間の承継は年々減少傾向にあり、その代わりにM&Aなどの外部に事業を受け渡す方法を選択する人も増えてきています。

事業の将来性のなさ

2016年に行われた日本政策金融公庫の「中小企業の事業承継に関するインターネット調査」によると、廃業理由としてあげられる上位二つの答えが「当初から自分の代でやめようと考えていた」「事業に将来性がない」でした。

瞬く間に変わりゆく社会の中で、常に経済のトレンドについていくのはそう簡単なことではありません。経営者はそのような社会の中で事業の将来性や継続性に不安を抱えています。そのような状況で事業を自身の親族などに引き継ぐのを躊躇う事態になっています。

親族内承継への価値観の変化

先にも挙げたように親族間の承継は年々減少傾向にあります。その理由として少子化によって単純に子供の数が減ったことが考えられますが、親族内承継への価値観が変化したことも理由の一つとして考えられます。

かつては、経営者が自身の事業を子供に継がせるということがほとんどであり、普通でした。しかし現在では、そのような親族内承継という方法の選択は減少傾向にあります。

子供がより自由な将来を設計するようになり、親である経営者自身もそのような生き方を応援するという傾向が強くなったことが考えられます。

後継者不足の解決法4選

親族・社内での事業承継

親族内承継の割合は2017年で41.6%、2021年の調査では38.3%と減少傾向にはあるものの、いまだ事業承継内での選択肢としては全項目中一番主流なものとなっています。

子供を後継ぎとして据えることが難しい場合は、その他の親族や自社内の従業員に会社を継がせることで後継者不足の解消をすることができます。

メリット:親族・社内での事業承継

親族・社内での事業承継のメリットとして第一に考えられるのが信頼ができるという点です。親族であれば信頼に関しては問題ありませんし、長年勤務し共に汗水をたらした従業員になら事業を安心して任せたいと思う経営者も少なくないはずです。

また後継者候補が事業を深く理解できている場合が多いため引き継ぐ際の手間が軽減できスムーズに事業承継を行うことができます。

デメリット:親族・社内での事業承継

親族・社内での事業承継では税務上での問題が大きい傾向にあります。贈与税や相続税の負などの税務上での負担がとても多く、後継ぎが事業を買い取る負担がとても大きくなってしまう場合では資金面での問題が出てきてしまいます。

また仮に親族内で会社引き継ぎの候補が多い場合では、会社の後継者を巡っての争いがおき身内で揉めることもあります。

M&Aで外部に引き継ぐ

中小企業におけるM&Aの成約件数は2012年から2017年にかけて3倍になっており。経営者の事業承継の選択肢の一つとしてM&Aが浸透してきたようです。

メリット:M&Aで外部に引き継ぐ

メリットとしては、M&Aでは企業の価値が高く評価されやすく、多額の売却益を見込めることです。

先に挙げた親族・社内での事業承継では身内に引き継ぐということもあり、多額の売却益を見込めるわけではなかったのですが、M&Aで外部に引き継ぐ場合は多額の売却益を得られるケースもあります。

また現在では事業承継センターや候補者募集のマッチングサイトなども多くなってきており、M&Aでの事業承継をするにおいても以前よりサポートを受けやすい環境が整ってきています。

デメリット:M&Aで外部に引き継ぐ

デメリットとしては実際に売却できるとは限らないという点が挙げられます。候補者マッチングサイトなどの浸透で以前よりは候補者を見つけやすくなったのは事実ですが、それでもまだ完璧とは言えず、候補者をスムーズに見つけられないケースもあります。

株式公開(IPO)

株式公開も後継者不足を解決するための有効な方法として挙げられます。

メリット:株式公開(IPO)

株式売却によって経営者は多額の売却益を得られる場合があります。またその売却した後も経営者は株式として会社の一部を保有することも可能です。

デメリット:株式公開(IPO)

株式公開には厳しい条件があり、その条件を全てクリアしなければできません。なのでそもそも株式公開が難しいという問題もあります。

また株式公開のためには多くの手続きが必要であり、それにも時間とコストがかかります。

廃業

最終的な手段としては廃業があります。廃業と聞くとあまり良いイメージは抱かれていないのも事実です。しかし考え方によってはメリットに捉えられる所もあります。

メリット:廃業

廃業であれば事業承継において起こりうる様々なトラブルを回避することができ、そこについて心配する必要もなくなり安心です。

また事業をやめるタイミングに関しても比較的に自由に自分で決めることが可能です。また最低限の財産を手元に残すことも可能です。

デメリット:廃業

廃業を選択した時に一番問題となり得るのが会社に借金がある場合に廃業後も借金を返済し続けなければいけないということです。

また廃業した場合では従業員や取引先やその地域にとって迷惑をかけたり不利益を生み出してしまう可能性もあるでしょう。

後継者不足解決のためのポイント

後継者不足に関して多くの経営者が頭を悩ませていますが、その解決方法は上記のように様々です。色々な選択肢を検討する上でもあらかじめ準備期間を設けて早い段階から対策をとることが大切です。

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