事業承継において、いつどのタイミングで行うかということはとても重要です。適切なタイミングで事業承継を行わなかったがために、事業承継後の会社の業績が悪化してしまったり、退職者が増加してしまったりなど、思わぬ事態を招いてしまう恐れがあります。
今回の記事では事業承継を行うベストなタイミングや事業承継の流れ、事業承継を行う上での注意点まで詳しく解説していきます。
事業承継のベストなタイミングとは?
事業承継を行う上でのベストなタイミングは各々の企業で異なるということは言うまでもありません。
しかし以下の中小企業の事業承継におけるアンケート調査を見ればわかるように、40代で事業承継を行うのがベストなタイミングと言えるのかもしれません。
https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/H25/h25/html/b2_3_1_2.html
事業承継のタイミングにおいて「ちょうど良い時期だった」と答えた人の割合の推移を見ると、40 代では73.3%、50代では56.8%、60歳以上では50.6%と減少傾向にあることが分かります。
またこの調査において「ちょうど良い時期だった」と答えた経営者の承継時の平均年齢は43.7歳であり、調査の対象となった経営者の承継時の平均年齢が50.9歳であることを踏まえると、事業承継をベストなタイミングで行うためには事業承継の準備に想像よりも早く取り掛かる必要があることが分かります。
事業承継を考える上での注意点・ポイント
事業承継には多くの時間を要する
事業承継には想像以上に多くの時間を要します。中小企業庁による事業承継ガイドラインによると事業承継を上手く行うためには5〜10年ほどの時間をかける必要があると言われています。
事業承継における株式の譲渡などの手続き自体にはそこまで時間はかからず、長くても数ヶ月で全ての手続きを完了することができます。
しかし事業承継において大切な後継者を育成するための期間や事業承継後に行う必要がある統合プロセス(M&Aでは主にPMI)でそれぞれ数年程の期間が必要になってきます。
また事業承継と言っても、親族内での承継や従業員への承継、外部の第三者への承継(M&A)など様々な方法があります。
どの方法にするかによっても必要となる期間は異なるため、選択肢を広く持つためにも早め早めの準備を心がける必要があると言えるでしょう。
後継者候補の意思確認を行う
会社を誰に引き継ぐかということは事業承継を進める上で最も慎重に決めたい事柄の一つだと思います。
現経営者の中にも、大切に経営してきた会社を自身の子供に引き継ぎたいと思っている方も少なからずいると思います。
しかし良くあるケースとして、親である経営者はてっきり子供が会社を引き継いでくれると思っていたが子供には会社を引き継ぐ気がなく、後継者を一から決め直さなくてはならなくなったというもがあります。
時期的に余裕がある段階であれば、子供に経営の楽しさなどを伝え興味を持ってもらうなど、会社経営への意思を育むことは可能ですが、余裕がない場合は他から選任せざるを得ません。
事業承継において後継者の選定は重要であり、肝であるため、事業承継をスムーズに行うためにも後継者候補の意思確認は前もって行うことが大切です。
無理に自力で行わない
事業承継をスムーズに行うためには専門家のサポートは不可欠であると言えます。また、会社においての事業承継のベストなタイミングを見計らうという意味でも専門家に相談することをお勧めします。
事業承継の相談先としては顧問税理士、取引先金融機関、事業承継支援センター、商工会議所などがありますが、中でもM&A仲介業者やM&Aコンサルティング会社に相談するのが良いでしょう。
相談先それぞれに特徴はありますが、M&A仲介業者やM&Aコンサルティング会社は親族内や従業員への承継だけでなくM&Aでの外部への承継にも精通しており、幅広く事業承継の方法を選択することができます。
事業承継の流れ・スケジュール
①現状の把握
まず事業承継を行うにあたり会社の経営状況と、誰が候補者となるのかを把握する必要があります。
会社の状況を把握する上で会社の資産状況、株式保有状況、自社株式の評価額には特に気に掛ける必要があります。
②企業価値の磨き上げ
会社の現状を把握した上で、企業の価値を引き上げるために改善策を講じる必要があります。
事業承継において近年では親族内承継の件数が減少傾向にあり、M&Aでの第三者への承継などの方法が浸透してきています。
M&Aで第三者に事業を承継するのであれば特に企業価値を上げ、買い手にとって魅力のある会社である方が売却先は見つかりやすいです。
また親族内承継や従業員への承継の場合でも、会社の経営改善をした状態で承継した方が良いことはいうまでもありません。
③事業承継計画の策定・M&Aの買い手探し
いよいよ事業承継を実施するフェーズに突入します。またここからは、親族内・従業員への承継とM&Aでの第三者への承継で実施することが異なってきます。
親族内・従業員への承継の場合では、事業承継計画の策定を行っていきます。事業承継計画では、後継者が事業承継に向けて何を行えば良いかがわかるように、現経営者と後継者が共同で行うことをお勧めします。
事業承継計画では、以下の3つについてまとめる必要があります。
- 事業をいつ承継するのか
- 誰に承継するのか
- 何をどのように承継するのか
M&Aによる第三者への承継を行う場合では、買い手とのマッチングを行う必要があります。
M&Aを行う際に自力では買い手を見つけるのは困難であり、専門性のある手続きが必要であるため、M&A仲介業者やM&Aコンサルティング会社への相談することをお勧めします。
④資産の移転・経営権の移譲
親族内・従業員への承継の場合では事業承継計画が終了し、M&Aによる第三者への承継を行う場合では買い手が見つかったら、次は事業承継の中核となる資産の移転や経営権の移譲を行っていきます。
親族内・従業員への承継の場合では、策定した事業承継計画に従って、後継者の教育や自社株の相続や贈与を行う必要があります。
M&Aによる第三者への承継を行う場合では、最終契約(DA)に従って、自社株の承継や対価の支払いなどを行う必要があります。
⑤事業承継後のケア
事業承継自体は以上のプロセスにより完了しますが、承継後に行うアフターケアはとても重要だと言えます。
これまで長い時間をかけ、慎重に行ってきた事業承継を成功に導くためにも最後まで気を抜かずに事業承継後の取り組みにも注力しましょう。
具体的に親族内・従業員への承継の場合では、新経営者による新たな視点からの事業の見直しが必要になります。
先代の経営者が培ってきた会社の強みを把握した上で、今後どのように事業を展開し、会社を発展させていくのかを新経営者なりの視点で考える必要があります。
M&Aによる第三者への承継の場合ではPMIという手続きをする必要があります。PMIとは「Post Merger Integration:ポスト・マージャー・インテグレーション」の略であり、とても重要なプロセスです。
PMIを行うことによりM&Aによって得られるシナジー効果を最大にできたり、リスクを事前に回避することに繋がるなど、大きなメリットがあります。